鼻の力って何?嗅覚を復活させる方法を解説【あしたが変わるトリセツショー】

2025年9月11日に放送の「あしたが変わるトリセツショー」
今回の内容は、私たちの生活に欠かせない「鼻の力」についてです。

鼻の力なんてぜんぜん意識してない…
普段何気なく使っている鼻ですが、実は食事の楽しみだけでなく、健康や寿命にまで深く関わっているとのこと。
鼻づまりに悩んでいる方はもちろん、「自分の鼻は健康だから大丈夫」と思っている方にこそ知ってほしい、嗅覚の重要性と改善方法をご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
※放送内容に私見を加えてお届けします。
嗅覚のすごいパワー
嗅覚にはすごいパワーがあることがわかっています。
たとえば「醤油の匂いをかぐと運動のパフォーマンスが上がる」というもの。
実際に醤油屋さんの従業員に対して行なった番組の実験では、醤油の匂いを嗅ぐと全員記録がアップしました。
このことについて、専門家の先生は、

おいしそうなにおいを嗅ぐことで、姿勢を安定させる筋肉と腕を伸ばす筋肉の連動が良くなったんです。

「食べたい」「おいしそう」という気持ちが運動のほうに何らかのスイッチを入れた可能性もあります。
とのこと。
また、別のマウスの実験では、「食べ物の匂いをかぐと体脂肪が燃えること」が確認されています。これは、

食べ物を食べる準備のため、エネルギーを使うモードに入ったものと考えられます。事前予告は大切で、代謝異常の予防にもつながります。
嗅覚が衰えるとは

現代社会において、嗅覚の衰えは私たちが想像している以上に深刻な問題となっています。なんと「60代以上の実に67%の人に嗅覚の異常が見られる」という衝撃的なデータもあるそうです。
嗅覚は10代で最も鋭敏になった後、加齢とともに徐々に低下していきます。
特に男性は60代から、女性は70代から嗅覚機能の有意な低下が現れやすく、80歳を超えると約7~8割の人に嗅覚障害が見られるとされています。
嗅覚は加齢とともにその機能が低下します。喫煙や鼻副鼻腔疾患のほか、動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病も嗅覚低下の要因にはなりますが、加齢が最も強いリスクファクターであり、60歳代以降、有意に低下することがわかっています。
しかし、嗅覚の衰えは単に年齢だけが原因ではありません。
長年の喫煙習慣は嗅上皮への慢性的なダメージを与え、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などの炎症が繰り返されることで嗅細胞が減少し、匂いを感じる通り道が物理的に塞がれてしまいます。
さらに、肥満度が高い人ほど嗅覚感度が低下する傾向があり、逆に身体活動量の多い人は嗅覚障害のリスクが低いということも研究で明らかになっています。

これは、食生活や代謝状態、運動習慣といった生活習慣全般が嗅覚に影響を与えているということですね。
嗅細胞の衰えのサインとは


でも嗅覚が衰えるってあまり感じたことがないんだけど…
嗅覚の低下は視覚や聴覚と違って、自分では気づきにくい感覚です。実際に、自分の嗅覚は正常だと答えた高齢者のうち、約6割に嗅覚低下がみられたという調査結果もあり、「隠れ嗅覚障害」が多く存在することが問題となっています。

実際にガス漏れ警報機が鳴るようなガス臭や煙の匂いにすぐ気づけないと生命に関わる…
日常生活の中で以下のような変化を感じることがあれば、嗅覚低下のサインとして捉えた方がいいでしょう。
- 至近距離まで鼻を近づけないと匂いが分からなくなった
- 周囲の人が「匂う」「くさい」と指摘する匂いに自分だけ気づかないという経験をした
- 以前より料理の風味を美味しく感じなくなったり、必要以上に調味料を足してしまったりする
- 好きだった花の香りやコーヒーの匂いがほとんど感じられなくなった
また、番組では「日本人に生活に即した匂いの項目」が紹介されていました。
その項目は、次のとおりです。
- 香水
- 花
- 便
- 汗
- 材木
- 生ごみ
- 家庭用ガス
- チョコレート
- コーヒー
- 緑茶
- いちご
- みかん
- 炒めたにんにく
- カレー
- バター
- パン屋
- しょうゆ
- のり
- みそ
- 炊けたごはん

日本人に生活に即した匂いの項目のうち、分からないものが1つでもあれば耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。
また、嗅覚の低下は、パーキンソン病の初期症状としても知られており、運動機能の低下よりも早い段階から現れることが多いとされています。
さらに、フレイルやサルコペニア(筋肉減少)の高齢者では89~92%が嗅覚低下を示すという研究結果もあり、嗅覚は全身の健康状態を把握する重要な指標であることが分かります。
ですので、嗅覚の異常を感じた場合は耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。
嗅ぐ力を活性化させる方法

嗅神経細胞は「再生能力を持つ特殊な神経」であり、トレーニングによって適切な刺激を継続的に与えることで機能回復が期待できます。
番組では、嗅覚刺激療法という嗅覚トレーニングが紹介されました。
この方法は、2009年にドイツのフンメル教授らが提唱した「毎日決まった複数の香りを嗅ぐ」というものです。

最新の診療ガイドラインでも強く推奨されているとのことで、実際に新型コロナ後遺症で嗅覚障害に悩む人が増えたことで再び注目を集めています!
フンメル教授らが行なった嗅覚刺激法とは、次のとおりです。
- バラ、レモン、ユーカリ、クローブの4種類のエッセンシャルオイルまたは香料を用意する
- 各香りを10秒程度ずつ嗅ぎ、それぞれの香りを深く吸い込む動作を2回ずつ行う
- これを朝と夜の1日2回実施する
トレーニングを行う際の重要なポイントとして、実際には香りを感じなくても、嗅いでいる間「バラの香りはこんな匂いだったな」などと頭の中で想像しながら嗅ぐことです。
これは脳に匂い情報を送り込むイメージトレーニングとなり、神経回路の再活性化を助けます。
しかし、

ユーカリやグローブってピンとこない…
というように日本人にはなじみが薄いものがあるので、紹介した4種類に限らず、コーヒーや好みの香水、ハーブ、スパイスなど身近で好きな香りで代用することも可能です。

様々な香りで刺激を与えるほうが、新鮮な信号で嗅覚受容体を幅広く活性化できるとも言われています。
嗅覚刺激療法の注意点としては、次のとおり説明されていました。
これを自宅で自分でやるときは、「食事やお茶のときに好きなにおいを嗅ぐ」だけでも十分効果があるとのことでした。

それならすぐに実践できる!
さらに、適度な運動習慣も嗅覚機能の維持に重要になります。
というのも、週3回以上の適度な運動を1年以上続けた高齢者は、運動習慣のない人に比べて嗅覚の識別能力が有意に高かったという研究結果があるからです。

運動と嗅覚には双方向の良いサイクルが存在するということですね。
まとめ【嗅ぐ力を復活させる方法とは】

今回の「あしたが変わるトリセツショー」で明らかになったのは、嗅覚が単に匂いを感じる機能以上の、私たちの健康と生命に直結する重要な感覚であるということです。

60代以上の67%に嗅覚異常が見られるという事実は、決して他人事として捉えられることじゃない…
嗅覚の衰えは食事の楽しみを奪うだけでなく、脂肪燃焼や運動機能、さらには認知症やフレイルのリスクにまで影響を与える可能性があります。
しかし同時に、嗅神経の再生能力を活かした適切なトレーニングによって、失われた機能を回復させることも可能です。
また、日頃から嗅覚のセルフチェックを習慣づけ、異変に気づいたら早期に対処する必要があります。
- 香水
- 花
- 便
- 汗
- 材木
- 生ごみ
- 家庭用ガス
- チョコレート
- コーヒー
- 緑茶
- いちご
- みかん
- 炒めたにんにく
- カレー
- バター
- パン屋
- しょうゆ
- のり
- みそ
- 炊けたごはん
鼻の健康は全身の健康の鏡――今日から始められる嗅覚ケアで、豊かな香りのある生活と健康な体を手に入れ、匂いを感じる力を大切にしましょう。


