食べても太らない脂の正体は「ラード」!?母乳と同じ“あぶらの構造”が太りにくさのカギ【シャーベル賞】
2026年10月12日放送予定の「カズレーザー&石井亮次も知らない神研究!シャーベル賞」
今回の放送は、すごい研究結果を出したのに、なぜか日の目を見ていない研究者たちが集結し、研究愛をしゃべり倒すという人気特番の第2弾です。
テーマは「食」に関する研究が中心で、「ラーメンがおいしくなる水」や「老化を抑えるポテンシャルを秘めたドリンク」、「観葉植物の食用化」など、世間の常識を覆す研究がずらりと紹介されました。
その中でも特に気になったのが、「食べても太らない脂!?」という研究。

脂っこいものを食べると太るのは当たり前じゃないの?
そう思うのは当然ですが、実は、同じ「あぶら」でも、その形(構造)によって体への働きがまったく違うことがわかってきているんです。
そこでこの記事では、番組で紹介された「食べても太らない脂」の正体となぜ太りにくいのかという理由をできるだけわかりやすく解説していきます。
毎日の食事の「あぶら選び」が変わるかもしれない内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
※番組放送終了後、放送内容も追記してお届けします。
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食べても太らない脂とは

食べても太らない脂とはどのようなものなのでしょうか?
研究しているのは明治大学の金子賢太朗准教授
この研究を行っているのは、明治大学農学部農芸化学科(栄養生化学研究室)の金子賢太朗准教授です。

金子先生は、京都大学大学院を修了後、アメリカのベイラー医科大学で研究を重ね、「食べたものが脳にどんな信号を送っているのか」を専門に研究している方になります。
研究室では、食べものに含まれる成分と、食欲をコントロールする脳の「視床下部(ししょうかぶ)」がどのようにやりとりしているのかを解き明かし、「食べもので健康長寿を実現する」ことを目指しています。
太らない脂の正体は「ラード(豚の脂)」
そして、気になる「食べても太らない脂」の正体は…
なんと「ラード(豚の脂)」なんです!
ラードといえば、とんかつや炒めもの、ラーメンのスープなどに使われる、いかにも「太りそうなあぶら」ですよね。
そんな
ラードと牛脂は「成分」はほぼ同じ
金子先生が比べたのは、ラード(豚脂)と牛脂(ぎゅうし/ヘット)の2つです。
どちらも動物性のあぶらで、「パルミチン酸」という飽和脂肪酸をどちらも約24%ずつ含んでいるなど、成分(脂肪酸の種類や割合)はとてもよく似ています。
そのため、これまでの栄養学では「どちらも同じ動物性脂肪で、とりすぎると太る」と同じように扱われてきました。
違いは「あぶらの形(構造)」にあった!
では、何が違うのでしょうか。
そのカギは、「あぶらの形(構造)の違い」にあります。
私たちが食べるあぶらの多くは、「グリセロール」という土台に、「脂肪酸」という3本の腕がくっついた形をしています。
イメージとしては、アルファベットのEのような形です。
- 縦の棒=グリセロール(土台)
- 横の3本=脂肪酸(腕)
この3本の腕には「上(端)」「真ん中」「下(端)」という位置があり、同じパルミチン酸でも、どの位置にくっついているかで体の中での働きが変わるんです。
そして、ラードと牛脂では、このパルミチン酸の位置がまったく違っていました。
| ラード(豚脂) | 牛脂(ヘット) | |
|---|---|---|
| パルミチン酸の量 | 約24% | 約24% |
| パルミチン酸が「真ん中」にある割合 | 70.5%以上 | 約15% |
| パルミチン酸がある主な場所 | 真ん中 | 両端 |

つまり、ラードはパルミチン酸の多くが真ん中にくっついている、ちょっと「特別なあぶら」ということなんですね。

じつは「母乳」と同じ形をしていた
さらに驚きなのが、このラードの形が、母乳のあぶらとそっくりだということです。
母乳に含まれるパルミチン酸も、その約7〜8割が真ん中にくっついています。
ここで、ちょっと不思議な話があります。
母乳だけで育つ赤ちゃんは、1日にとるカロリーの約50%を脂質(あぶら)からとっていると言われています。
大人がこれだけ脂っこい食事を続けたら、あっという間に太ってしまいそうですよね。
ところが赤ちゃんは、太りすぎるどころか、そのエネルギーを使って脳や体をぐんぐん成長させていきます。

なぜ赤ちゃんは、これだけあぶらをとっても大丈夫なの?
この疑問から、金子先生は「母乳と同じ形をしたあぶらを大人が食べたら、脳にいい信号が送られるのでは?」と考えたのです。

ちなみに、この「真ん中にパルミチン酸があるあぶら」の良さは、すでに赤ちゃん用の粉ミルクづくりにも活かされていて、母乳に近い形のあぶらを配合して、消化吸収を助ける工夫がされている商品もあるんです。
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ラードが太らない理由とは?

では、なぜラードのように「真ん中にパルミチン酸があるあぶら」は太りにくいのでしょうか。
その理由を、順番に見ていきましょう。
理由① 消化のされ方が違う
食べたあぶらは、そのままでは大きすぎて腸から吸収できません。そこで、すい臓から出る「リパーゼ」という消化酵素が、あぶらを細かく切り分けます。
このリパーゼ、いわば決まった場所しか切れないハサミで、先ほどの「E」の形でいうと、切れるのは上と下の腕だけ。真ん中の腕は切ることができません。
そのため、パルミチン酸が「E」のどこについているかで、消化のされ方が変わってくるんです。
- 牛脂の場合:パルミチン酸の多くは上と下の腕にあるので、ハサミで切り離されて1本ずつバラバラになります。バラバラになったパルミチン酸は、腸の中のカルシウムとくっついて「石けんカス」のような固まりになりやすく、体に吸収されにくくなります。
- ラードの場合:パルミチン酸の多くは真ん中の腕にあるので、ハサミでは切られません。土台にくっついたまま残り、「2-モノパルミチン」という形でスムーズに体に吸収されます。
つまり、同じパルミチン酸でも、ラードを食べると「2-モノパルミチン」という形で体の中に入ってくるというわけです。
そして、この「2-モノパルミチン」こそが、太りにくさのカギを握る成分なんです。
(参考:マイナビニュース(脂肪酸の結合位置と吸収の違い)、PLOS ONE論文(PMC))
理由② 脳の「満腹センサー」であるレプチンの効きを良くする
私たちの体には、体重を一定に保とうとするしくみがあり、その中心となるのが「レプチン」というホルモンです。
レプチンは脂肪細胞から出ていて、体に脂肪が増えるとたくさん分泌されます。
そして脳に「もう十分エネルギーはあるよ!」と伝えることで、
- 食欲をおさえる
- 脂肪を燃やしやすくする
といった働きをしてくれます。

まさに天然の「やせホルモン」ですね!
ところが、太っている人ほどこのレプチンが効きにくくなるという困った現象があります。
これを「レプチン抵抗性」といいます。
たとえるなら、体から脳へ「もうお腹いっぱいだよ!」というメールがどんどん届いているのに、脳がそれを既読スルーしているような状態。
その結果、脳は「エネルギーが足りない!」と勘違いしたまま、食べすぎてしまったり、代謝が落ちたりして、さらに太りやすくなるという悪循環に陥ってしまうのです。
(参考:PLOS ONE論文(PMC))

でも、ラードとレプチンはどう関係するの?
金子先生の研究グループは、ラードを消化してできる「2-モノパルミチン」が、このレプチンの効きを良くすることを発見しました。
しかも、「パルミチン酸そのもの」や「パルミチン酸が端にくっついたものでは、このような効果は見られなかったとのことで、成分が同じでも、「真ん中にあるという形そのものが、脳への特別な信号になっている」ということが明らかになったんです。
(参考:bioRxiv「2-monopalmitin, but not 1-monopalmitin, enhances hypothalamic leptin responsiveness」、JST 年次報告書(PDF))

理由③ マウス実験で「太りにくさ」が確認された
さらに金子先生たちは、マウスを使った実験で、実際に太りにくくなるのかを確かめました(2025年に国際学術誌『PLOS ONE』で発表)。
実験では、カロリーの45%をあぶらからとる“高脂肪食”をマウスに与え、そのあぶらを「ラード」にしたグループと「牛脂」にしたグループで比べました。

マウスに脂っこい食事を与え続けたらどうなったかという実験ですね。
その結果は次のとおりでした。
| 比べたポイント | 牛脂を食べたマウス | ラードを食べたマウス |
|---|---|---|
| 体重 | 大きく増えた | 増え方がおさえられた |
| 体脂肪 | たくさんたまった | 少なかった |
| 食べる量 | 多いまま | 少なくなった |
| 燃やすエネルギー | 糖と脂肪が半々寄り | 脂肪を優先して燃やす |
| 血糖値 | 高め | 低めで安定 |
| インスリンの効き | 悪くなった | 良い状態をキープ |
| 脳のレプチンの効き | 効きにくくなった | 良い状態をキープ |
ラードを食べたマウスは、自然と食べる量が減り、さらに脂肪を燃やしやすい体になっていたんです。(参考:PLOS ONE論文(PMC)、明治大学 論文掲載のお知らせ)
また、ラードを食べたマウスでは、インスリンの分泌を助ける腸のホルモン「GLP-1」が多く出ていて、これが血糖値の安定に関わっていると考えられています。(参考:PLOS ONE論文(PMC))
決め手は「レプチンを作れないマウス」の実験
また、金子先生たちは、生まれつきレプチンを作れないマウスにも同じ実験を行いました。
もし「ラードで太りにくくなるのはレプチンのおかげ」なら、レプチンがないマウスでは差が出ないはずですよね。
結果はまさにその通りで、レプチンを作れないマウスでは、ラードでも牛脂でも同じように太ってしまったとのこと。

このことから、ラードの太りにくさは、レプチンの働きを良くすることを通じて生まれていることがはっきりしたんです!
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まとめ【あぶらは「量」だけでなく「形」で選ぶ時代へ】

今回は、シャーベル賞で紹介された「食べても太らない脂」について解説しました。
ポイントをまとめると、次のとおりです。
- 食べても太らない脂の正体は「ラード(豚の脂)」
- ラードと牛脂は成分はほぼ同じだけど、パルミチン酸がくっついている位置が違う
- ラードは、母乳と同じ「真ん中にパルミチン酸がある」形をしている
- ラードを消化してできる「2-モノパルミチン」が、脳の満腹センサー「レプチン」の効きを良くする
- マウス実験では、ラードを食べたほうが体重・体脂肪の増加がおさえられ、脂肪を燃やしやすくなった
| ラード(豚脂) | 牛脂(ヘット) | |
|---|---|---|
| 成分(パルミチン酸の量) | 約24% | 約24% |
| パルミチン酸の位置 | 主に真ん中(母乳と同じ) | 主に両端 |
| 消化後 | 2-モノパルミチンとして吸収 | バラバラになり吸収されにくい |
| 脳のレプチンの効き(マウス) | 良い状態をキープ | 効きにくくなる |
| 太りやすさ(マウス) | 太りにくい | 太りやすい |
これまで「脂肪はとにかく控えるべき」と考えられてきましたが、金子先生の研究は、あぶらは“量”だけでなく“形”でも体への働きが変わるという、新しい常識を教えてくれました。
金子先生の研究室では、あぶらを「多い・少ない」だけでなく、どんな構造のあぶらかという視点でとらえ直す研究を進めています。(参考:PR TIMES「明治大学と東急不動産の共同研究がトピックス賞を受賞」)
「あぶらは太るから全部ガマン」ではなく、「どのあぶらを選ぶか」を意識するだけで、食事の楽しみを残しながら健康に近づけるかもしれません。

炒めもののあぶらを選ぶときなど、ぜひ今回の「あぶらの形」の話を思い出してみてくださいね!
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